はじめまして。署名ドットコム、メルマガ担当の佐伯と申します。今回から月2回、みなさまに「へー!」と思っていただけるようなサインにまつわるニュースや豆知識を、時にトリビア的なネタも交えつつお届けしたいと思います。
第1回目は、「銀行のサイン認証導入&印鑑レス化」に関する話題をお届けします。
サインで口座開設や口座振替手続きが可能
日本に長年定着していた、“銀行口座の開設には印鑑が不可欠”というイメージも、時代とともに少しずつ変わりつつあります。
銀行での印鑑登録は国内で次々と銀行が設立された明治時代に導入されたシステムですが、グローバル基準に歩調を合わせ、サインを印鑑と並ぶ個人認証ツールとして採用する銀行が徐々に増えています。
新生銀行やイオン銀行では、口座開設や口座振替手続きに関してサインでの登録にも対応しています。
「フルネーム」で「姓名の書体を統一する」など各銀行が定める基準を満たしていれば、アルファベットでの登録もOK。印鑑と同等の効力が認められるわけです。
サインの強みは「なくさない」「盗まれない」「偽造されにくい」「家に忘れない」というメリット。常に携帯できるスキルですから、銀行に来てから「あっ!」と思って慌てて引き返す、なんてこともないわけです。
とはいえ、印鑑文化を持つ国は稀少
じゃあデメリットしかないの?
という感じでなんだか肩身が狭くなっている感じの印鑑ですが、印鑑は日本に古くからある大切な文化。「はんこ」は外国人観光客に人気の日本土産でもありますし、グローバル化の波に押し流されて消えてしまうのは残念です。
ちなみに、「はんこ」とは印を押すための文字を彫刻したものを指します。「はんこ」を紙などに押した跡が「印象(印影)」、「印象」の登録簿が「印鑑」といった定義があるのですが、今では混同して使われているのが現状です。
ちょっと話がそれてしまいましたが、印鑑文化はご想像の通り中国から日本に伝わったもの。
ですが、意外にも現在本家中国では主にサインが使われており、印鑑文化を持つ国は日本、韓国、台湾と非常に少ないんですね。
サインのデザインサービスを提供している私たちですが、数少ない印鑑文化を持つ国としては、グローバル基準のサインと印鑑が共存できるような社会を提案していけたらと思っております。
国内のメガバンクが印鑑レスに向かって動き出す
さて、再び銀行の個人認証システムに話を戻しましょう。
日本社会のデジタル化やグローバル化に伴い、主要銀行ではサインの導入を含め「印鑑レス化」への動きが見られます。
三井住友銀行では2015年夏から電子署名を導入。「なりすまし防止対策」として、NTTデータ、NECの協力の元、書き順や筆圧など個人の書き癖をデータとして取り込んだサイン認証エンジンシステムを開発しています。
このほか、りそなグループでは静脈認証、三菱UFJ銀行は印鑑不要のスマホ口座開設により、店頭で印鑑が不要になる印鑑レス化に向けて取り組んできました。
印鑑レス化実現のハードルとなったのは、口座振替の不正な申し込みへの防御策をどうするのかということ。電子署名導入&そのなりすまし対策をしている三井住友以外の2行は、預金者への登録メールアドレスへの通知やインターネットバンキングの認証システムとの組み合わせで対応しました。
これら国内のメガバンク3行に見られる「印鑑レス化」の流れは、実印や印鑑証明が必須だった不動産業界でも見られるようです。今後ますますサインの需要が高まって行きそうですね。
サイン認証エンジンも重視する「書き癖」こそ、サインの個性
時おり「サインがお手本と同じに書けないんです」と肩を落とすお客様がいらっしゃいます。
そんな風に気にされるのは、きっと真面目で几帳面な方でしょう。
ですが、デザイナーのデザインにお客様の書き癖が加わることは決して悪いことではないんですね。
先述のサイン認証エンジンシステムもその点を非常に重視しているのは、それこそが簡単に真似のできない個性だからです。
私たちが提供するデザインは、あくまで“世界に1つのマイサイン”のベースに過ぎません。そこにお客様の書き癖が加わって初めて真のオリジナルサインが完成する、というのが私たちの考え方です。
「真似されにくい」というセキュリティー面のレベルアップにもつながります。
お客様の書き癖が加わる余地を残してデザインを起こしていますので、それで大きくデザイン性が損なわれる心配はございません。
なので、「同じに書く」ことにとらわれず練習していただき、ご自分の名前とサインにさらに愛着を持っていただけたら嬉しく思います。
株式会社署名ドットコム 総合プロデューサー兼代表
2006年に署名ドットコムを創立し、サインデザインの分野でパイオニアとして活躍しています。著書には『サイン・署名の作り方』があります。